ブラウアーの不動点定理の証明

ここでは、シュペルナーの補題を用いた不動点定理の証明を紹介します。不動点定理の証明方法としては、最も簡単な方法だと思います
はじめに、シュペルナーの補題を証明するのに必要なn単体と重心細分というものについて説明します。

 単体                                                                                     
 n単体とは、n+1個の頂点((a1,a2,a3------a,an+1)|(a1-ai)(i=1~n+1)が一次独立から構成されるある領域のことです。例えば、点は0単体であり、線分は1単体で2つの頂点から構成されa1,a2をその頂点とすると
b1a1+b2a2(0≦bi≦1|i=1,2)b1+b21。
また、三角形は2単体で3つ頂点a1,a2,a3から構成され
b1a1+b2a2+b3a3(0≦bi≦1|i=1,2,3)b1+b2+b31
そしてその頂点を重心細分すれば、n単体を分割することができます。1単体(線分)の重心細分とは線分の中間点に新たに頂点を設け線分を2つの線分に分割することです。
下図は、a1,a2をその頂点とする1単体(線分)の重心細分です。頂点a1,a2の中間に新たに頂点a3が加わり1単体(a1,a2)が1単体(a1,a3)と1単体(a3,a2)に分割されました。

さらに、この1単体(a1,a3)(a3,a2)を重心細分すると、下図の様に頂点a1,a3と頂点a2,a3の中間点それぞれに頂点a4,a5が加わり1単体
a1,a4)(a4,a3)(a3,a5)(a5,a2)に分割されます。
 
2単体(三角形)の重心細分は、下図の様になります。頂点a1,a2,a3の中間点に頂点a4が頂点a1,a2の中間点に頂点a5が同様にして頂点a6,a7が新たに加
わります。こうして、2単体(a1,a2,a3)が2単体(a1,a4,a5)(a1,a4,a7)(a2,a4,a5)(a2,a4,a6)(a3,a4,a7)(a3,a4,a6)と6つの2単体に分割されました。

次に、一般的なN単体の重心細分について説明していきます。
  N単体の重心細分   
N+1個の頂点を((a1.1,a1.2,a1.3------a1.n,a1.n+1)|(a1.1-a1.i)(i=1~n+1)が一次独立とします。
そうすると、b1a1.1+b2a1.2+b3a1.3+-----bna1.n+bn+1a1.n+1(0≦bi≦1|i=1~n+1) この領域がN単体となります。
以下、重心細分の過程を説明します。
 この計算により新たに頂点a2.1が生成されました。
 ↓(a1.1,a1.2,a1.3-----a1.n,a1.n+1)からn個の頂点を選択する。n+1通りの場合がありますが、ここでは例としてa1.n+1以外の頂点を選択します。)
この計算により新たに頂点a2.2が生成されました。
 ↓(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n)からn-1個の頂点を選択する。n通りの場合がありますが、ここでは例としてa1.n以外の頂点を選択します。)
この計算により新たに頂点a2.n+3が生成されました。
 ↓これを頂点が1つになるまで繰り返す。
 ・ 
 ・
 ・
 ↓
(a1.1
a2.1をN単体(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n,a1.n+1)
の重心といいます。また、(a2.1,a2.2,a2.n+3------a1.1) このN+1個の頂点の集合からN単体を構成できます。頂点の選択の場合の数は、
(n+1)!通りあるので(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n+1)を頂点に持つ単体が、その内部に(n+1)!個の単体を含む事になります。
※生成されたaの右下の添字は、左側が何度目の重心細分かを示すもので、N度目ならばN+1を書いています。その右の添字は、どの頂点の集合から生成されたかによって定まります。以下その説明をしていきます。
まず、(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n+1)この集合から生成された頂点をa2.1とします。次にN個の頂点の集合です。              
N+1個の頂点(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n+1のうちどれか1つが含まれない事になりますが,含まれない頂点a1.iのiが大きいものから順番にまだ使われていない自然数で最小の数を対応させていきます。
例えばa1.n+1を含まない場合(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n)=a2.2 a1.nを含まない場合(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n+1)=a2.3a1.1を含まない場合(a1.2,a1.3-----a1.n,a1.n+1)=a2.n+2となります。
そしてN-1個の頂点の集合は2つの頂点が含まれない事になりますが、含まれない頂点a1.ia1. j (i>jとする)のiが大きいものから順番に上の作業でまだ使われていない自然数で最小の数を対応させます。iが同じ集合が、N個考えられますがそこでは、jが大きいものから数を対応させます。
例えばa1.n,a1.n+1を含まない場合(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n-2,a1.n-1)a2.n+3a1.n-1,a1.n+1を含まない場合(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n-2,a1.n)=a2.n+4となります。
 
        辺単体
n-1辺単体とは、単体の持つn+1個の頂点から選択した個の頂点の集合により構成される単体の事です。
上述重心細分では、1回の重心細分につき(N+1)!個の新たな単体が生成されますが、これら単体の持つn-1辺単体が共通のものとなるのはどの様な場合でしょうか。それは、ある単体の持つ n+1個の頂点のうち個の頂点が他単体の持つ n+1個の頂点のうちの個の頂点と同じであるという事です。 
例     単体a2.1,a2.2,a2.n+3------a1.1)     単体a2.1,a2.3,a2.n+3------a1.1)
 単体Aと単体Bでは、a2.2a2.3の違いがあります。他の頂点は同じです。つまり、n-1辺単体(a2.1,a2.n+3------a1.1)が共通のものとなっています。ではこの違いはどのようにして生じたのでしょうか。
ここで、単体単体が重心細分によって生成される過程を比較します。
        単体  
1段階目a1.1,a1.2,a1.3------a1.n,a1.n+1) 
2段階目↓(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n,a1.n+1)からn個の頂点を選択する。a1.n+1以外の頂点を選択」します。)

3段階目↓(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n) からn-1個の頂点を選択する。a1.n以外の頂点を選択します。)

     
 ・ 
 ・
 ・
N+1段階目
(a1.1)
      単体B
1段階目a1.1,a1.2,a1.3------a1.na1.n+1) 
2段階目 ↓a1.1,a1.2,a1.3------a1.na1.n+1)からn個の頂点を選択する。a1.n以外の頂点を選択」します。)

3段階目↓(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n+1) からn-1個の頂点を選択する。a1.n+1以外の頂点を選択します。)

 
 ・ 
 ・
 ・
段目
(a1.1)
このようにn+1個の頂点からn個の頂点を選択する段階で単体A
では、a1.n+1以外を単体Bではa1.n以外を選択している。
さらに、次の段階では単体Aでは、a1.n以外を単体Bではa1.n+1以外を選択している。そしてそれ以後の段階では全て同じ頂点の集合を選択をしている。
ここで、一般的な説明をするために記号の定義をします。
N単体をσと表記し、最初のσ(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n+11と表記します。σ(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n+1=S1 さらに1の重心細分によって生成されたN+1!個のσの集合を2 、
2σそれぞれ重心細分によって生成された個のσの集合を3とし、以下同様にi-1の全てのσそれぞれの重心細分によって生成されたσの集合をiとする。例えば、σA(a2.1,a2.2,a2.n+3------a1.1)2となります。あるN-1個の頂点の集合が、2つの相異なるN単体iσ、Siσの頂点の集合に含まれている場合、それぞれの単体が生成される重心細分の過程で、K-1段階目まで同じ頂点の集合を選択し、k段階目で異なる頂点の集合を選択をしk+1段階目からN段階目までは、全て同じ頂点の集合を選択をしています。
それでは、あるN-1個の頂点の集合が3個以上の単体に持たれるということはあり得るでしょうか。
n+1-(k-1)=mとすると     m-(m-2)(m-1)-(m-2)=2  組み合わせ論の計算によりあるn-1辺単体は、最大でも2つの単体にしか含まれないことがわかります。
ここで、σ(a2.1,a2.2,a2.n+3------a1.1)が含むn-1辺単体がどのような性質をもつのか詳しくみていきます。
a2.1,a2.2,a2.n+3------)これは、σ(a2.1,a2.2,a2.n+3------a1.1)の持つn個の頂点の集合ですが、これは上述議論によってσAとは異なる2σのn個の頂点の集合に含まれます。
一般的に、a2.1を含むn個の頂点の集合は、2つの相異なるN単体2σ、S2σの頂点の集合に含まれます。
逆にa2.1 を含まない個の頂点の集合は1つの2σにだけ含まれます。
ここで2σそれぞれの重心細分の過程を観察します。
例としてσ(a2.1,a2.2,a2.n+3------a1.1) ,σ(a2.1,a2.3,a2.n+3------a1.1)の重心細分をみていきます。
σ(a2.1,a2.2,a2.n+3------a1.1)
1段階目(a2.1,a2.2,a2.n+3------a1.1)  
2段階目↓上のn+1個の頂点からn個の頂点を選択する。ここでは、a2.2以外の頂点を選択」します。)
    (a2.1,a2.n+3------a1.1
)
3段階目↓上の頂点からn-1個の頂点を選択する。(ここでは、a2.1以外の頂点を選択します。)
     a2.n+3------a1.1)
       ・ 
       ・
       ・

段階目
      (a1.1)    
σ(a2.1,a2.3,a2.n+3------a1.1)
1段階目(a2.1,a2.3,a2.n+3------a1.1)

2段階目↓上のn+1個の頂点からn個の頂点を選択する。ここでは、a2.3以外の頂点を選択」します。)
     (a2.1,a2.n+3------a1.1)

3段階目↓上の頂点からn-1個の頂点を選択する。(ここでは、a2.1以外の頂点を選択します。)
     a2.n+3------a1.1)
       ・
       ・
       ・

N段階目
      (a1.1) 
2段階目の頂点の選択でσ
A、σBで相異なる頂点,a2.2 a2.3がそれぞれ取り除かれている。そしてそれ以後は全く同じ頂点の集合を選択している。
2σの重心細分では、重心細分の2段階目でN+1個の頂点の集合からN個の頂点を選択しますが、そのN 個にa2.1含む場合と含まない場合があります。
その結果 集合J={3∋σ|σ=自身が生成される過程2段階目でN 個の頂点の集合がa2.1を含む} 
集合K={3∋σ|σ=自身が生成される過程2段階目でN 個の頂点の集合がa2.1含まない}
集合J,Kをこのように定義すると、3は、この2つの集合J,Kの和集合となります。
J∋σ
iの任意のN個の頂点の集合は、他のある3∋σkのもつN個の頂点の集合と共通のものとなります。今後、この性質を持つσをタイプ1のσと呼ぶことにします。そして、K∋σiは、自身がもつN+1通りのN個の頂点の集合のうちN通りは、他のある3∋σkのもつN個の頂点の集合と共通のものとなりますが、一つだけ、自身しか持たないN個の頂点の集合があります。今後、この性質を持つσをタイプ2のσと呼ぶことにします。
タイプ1の
i∋σi,タイプ2のi∋σiの定義
タイプ1の
i∋σi,自身が持つ任意のN個の頂点の集合が、他のあるi∋σkの持つN個の頂点の集合と共通のものとなる。
タイプ2の
i∋σi,自身が持つN+1通りのN個の頂点の集合のうちN通りは、他のあるiσの持つN個の頂点の集合と共通のものとなるが、一つだけ、自身しか持たないN個の頂点の集合がある。
3σはJ∋σをタイプ1へK∋σをタイプ2へ対応させることができましたが、一般にiσも同じ様にタイプ1、タイプ2に分けることができます。
タイプ1へ分類されるiσ:自身の生成過程の2段階目で選択されたN個の頂点の集合が、ある2つの相異なるi-1σ,i-1σkそれぞれの頂点に含まれている。
タイプ2へ分類されるiσ:自身の生成過程の2段階目で選択されたN個の頂点の集合が、ある1つのi-1σの頂点にのみ含まれている。
ここで、重心細分を繰り返し行った時のiσのN+1個の頂点それぞれに次の規則に従い数字をつけます。
iσの頂点aijを、1上の座標で表現したときaijb1a1.1+b2a1.2+b3a1.3+-----bna1.n+bn+1a1.n+1(0≦bi≦1|i=1~n+1) 
a
1.iの係数biで0≠biとなっているbiのiをaijに対応させます。0≠biを満たすiが複数ある場合にはその中から任意のiを1つ選んで対応させます。
例えば、aijb1a1.1+b2a1.2+b3a1.3(0<bi<1|i=1,2,3)b1+b2+b3=1であれば1か2か3いずれかの数字をつけ、aijb4a1.4+b6a1.6(0<bi<1|i=4,6)b4+b61であれば4か6の数字をつけるといった具合です。
つまり、各頂点を1~n+1の自然数へ対応させる写像です。この写像をFとします。F(aij)=i(i=1~n+1)  
iσに対してこの写像を用いた場合Fは、σの持つN+1個の頂点(ai.j,ai.k,ai.l------ai.m,ai.nに作用するものとして、
F(σ)=F(ai.j),F(ai.k),F(ai.l)------F(ai.m),F(ai.n)=(i1,i2,i3,i4・・・in+1(i=1~n+1
また、ある頂点aijがK個の相異なるN単体i∋σ1、Si∋σ2、Si∋σ3、・・・、Si∋σkに含まれる時、
F(σ1)=F(ai.j)=i1,F(ai.k),F(ai.l)------F(ai.m),F(ai.n)
F(σ2)=F(ai.j)=i2,F(ai.o),F(ai.p)------F(ai.q),F(ai.r)
F(σ3)=F(ai.j)=i3,F(ai.s),F(ai.t)------F(ai.u),F(ai.v)
   ・
   ・
   ・
F(σk)=F(ai.j)=ik,F(ai.w),F(ai.x)------F(ai.y),F(ai.z)
 i1=i2=i3=・・・=i
そして、集合
i={F(σ)|σ=全てのi∋σ} この様に集合iを定めると、次の補題が成り立つことが分かります。
シュペルナーの補題、任意のiについてiσk)が1~n+1の全てを元としてもつi∋σk奇数個存在する。
証明 以下、このような1~n+1の全てを元としてもつi∋F(σo)の逆像σoを完全なN単体と呼ぶ。
あるi∋σ
oF(σo)=(i1,i2,i3,i4・・・in+1)からN個の元ik(ik=1~n+1)を選択する。その選択の仕方はN+1通りあるが、その中で1~nの全てを元として持つ場合を数える。これは、0か1か2の場合があり得る。例えばその場合の数がkならばi∋σoは、完全なN-1辺単体をk個持つこととなる。
ここで、次のような規則によって完全なN-1辺単体の数え上げを行う。
i∋σがもつ完全なN-1辺単体の数を足して、その合計値を求める。 各i∋σが持つ完全なN-1辺単体の数は、0か1か2のいずれかとなるが、1の場合には、そのi∋σが完全なN単体である事を意味している。したがってiが完全なN単体を奇数個含めばこの合計値は奇数となり、
iが完全なN単体を偶数個含めばこの合計値は偶数となる。今度は、あるi∋σに含まれるあるN個の頂点の集合を基準にして合計値を求める。N個の頂点の集合には、ある2つの相異なるN単体i∋σi,
i∋σ
に含まれる場合とある1つのi∋σにしか含まれない場合があります。このことから、
式、1(ある2つの相異なるN単体i∋σ
i,i∋σkに含まれる完全なN-1辺単体の数)×2+(ある1つi∋σにのみ含まれる完全なN-1辺単体の数)×1
という計算によっても求めたい合計値が得られます。つまり、ある1つのi∋σにのみ含まれる完全なN-1辺単体の数が奇数個存在することを示せばよいという事です。この事を帰納法によって示します。
まずは、1単体(線分)の重心細分です。下図では、1単体(a1,a2)を2回重心細分したときの推移を表現しています。


2回の重心細分によって頂点はa1,a2,a3,a4,a5の5つになりました。この5つの各頂点に上述の規則によって1か2の数字を対応させると、
a
1→1、a2→2、a3→1か2、a4→1か2、a5→1か2 となります。すると4つの1単体は(a1,a4)→(1,1)か(1,2)、(a4,a3)→(1,1)か(1,2)か(2,1)か(2,2)
a3,a5)→(1,1)か(1,2)か(2,1)か(2,2)、(a5,a2)→(1,2)か(2,2) ここでの完全なN-1辺単体とはai)=1となるai(i=1~5)のことです。
頂点a1は端点であるため、1単体(a1,a4)にのみ含まれています。一方頂点a3,a4,a5は、端点ではないため2つの1単体に含まれます。したがって、式、1により
1単体(線分)では、補題が成り立つ事が分かります。
N-1では、補題が成り立つと仮定をし、Nでも成り立つことを示します。
下の表は、1の重心細分の過程を3段階目の途中まで切り取ったものです。2段階目にN個の頂点を選択する際a1.n+1以外の頂点を選択したため1段階目を無視すれば2段階目以降は、N-1単体の重心細分と全く同じあることが分かります。
1段階目 この計算により新たに頂点a2.1が生成されました。
2段階目↓(a1.1,a1.2,a1.3-----a1.n,a1.n+1)からn個の頂点を選択する。n+1通りの場合がありますが、ここでは例としてa1.n+1以外の頂点を選択します。)
この計算により新たに頂点a2.2が生成されました。

3段階目↓(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n)からn-1個の頂点を選択する。

その結果として、下のような頂点の集合が生成されますが、下の集合のa2.1を無視すればN-1単体の重心細分を1回行った時に生成される新たなN-1単体の
N個の頂点の集合となります。

(a2.1,a2.2,a2.i------a1.k) 以下、S1の重心細分2段階目にN個の頂点を選択する際、a1.n+1以外の頂点を選択して生成された2σの集合を2とし

iの定義を:i={iσ|σ=全てのi-1σそれぞれの重心細分によって生成されたiσで、かつ自身の生成過程の2段階目で選択されたN個の頂点の集合が、ある1つのi-1σの頂点の集合にのみ含まれているiσ}とする。
このときiσはタイプ2のσなのでRiσが持つN+1個の頂点のうち、ある1つの頂点aijを除いたN個の頂点の集合は、他のiσの頂点の集合には含まれない。iσが持つ、この自身にのみ含まれるN個の頂点の集合をαとし、各Riσαの集合をLiとする。
さらに、N-1単体をΔと表記し、最初のΔ(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n1と表記します。(a1.1,a1.2,a1.3------a1.n=P1 さらに1の重心細分によって生成された(N-1)!個のΔの集合を
2 、2∋Δそれぞれ重心細分によって生成された個のΔの集合を3とし、以下同様にi-1の全てΔそれぞれの重心細分によって生成されたΔの集合をiとする。すると、i=iである事が分かる。したがって、帰納法の仮定と式、1によりNでも補題が成り立つ。

不動点定理 N単体から自身への連続写像f(x)には、不動点が存在する。
証明、背理法によって示す。
iσの内部のある点x、σ∋xから(x)への半直線 (1-t)x+tf(x)  t≧1 を考える。xは、1上に座標があるので次の様に表現できる。
  x=b1a1+b2a2+b3a3+…+bnan+bn+1an+1
 (x)=1a1+2a2+c3a3+…+cnan+cn+1an+1

とすれば、
(1-t)x+tf(x)=((c1-b1)t+b1)a1+((c2-b2)t+b2)a2+((c3-b3)t+b3)a3+…+((cn-b)t+b)an+((cn+1-bn+1)t+bn+1)an+1

(1-t)x+tf(x)に対し適当なtを掛けるci≦bi(i=1~n+1)となる項が消える。この時tは、ある1項を消す最小のtを選ぶ。
ここで、各iσの各頂点aijをxに代入する。そして、各aijに対して消えた項((ci-bi)t+bi)aiの数字iを名付ける。これは、補題の条件を満たす。
したがって、完全なN単体iσoが奇数個存在している。ここで、完全なN単体iσoの重心による無限点列をつくる。 

(X2,X3,X4,……X)  Xiは、完全なN単体iσoの重心とする。
コンパクト集合上の任意の無限点列は、ある点Aに収束する無限部分点列を含む。すると、Aの開球の半径よりも近くに完全なN単体の重心が存在する。
ところで完全なN単体iσoの頂点aijからAまでの距離は、σ内部に座標を占めるある2点x,yの距離の最大値を
d(σ)=max{d(x、,y)|x,y∈σ}( iσ)とすれば
|aij-A|≦|aij-Xi|+|Xi-A|≦d(σ)+|Xi-A| であり、i=∞でこの式の右辺は0に収束する。その時Aの開球は完全なN単体の全ての頂点を含んでいる。
ここで半直線を(x)=(1-t)x+tf(x)とする。(x)は連続写像なので近くのものを近くへ写す。したがって、(A)の開球に対し、うまくAの開球をとりさえすれば、Aの開球上の点が全て)の開球へ写される。ここで、完全なN単体の各頂点をe1,e2,e3en+1と表す。
 (e1)1a1+2a2+c3a3+…+cna+cn+1an+1 c1~cn+1の少なくとも1つが0。
ここで、c1~cn+1で値を比較したとき c1が最大値であったとする。するとa1の係数k1の値が0である
(e2)k1a1+k2a2+k3a3+…+knan+kn+1an+1 が存在して(e1),(e2の距離は、d(Y(e1),(e2)=c1+|c2-k2|+...+|cn+1-kn+1|>c1である。
このようなc1がとる値は、1/n+1≦1である。
ところが、()の開球の直径を1/n+1>PとなるPでとればd(Y(e1),(e2)<1/n+1とすることもできるはずであった。これは、矛盾である。


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